
樹木希林の名言7選|老いも病気も面白がる生き方
「年をとることにブレーキをかけない」と語った樹木希林の名言7選。老いや病気、死生観を「面白がる」生き方と、借りものの身体という視点から、今日を生きる力をひもとく。
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老い、病気、そして死。誰もが向き合いたくないと感じるテーマを、樹木希林は独自のユーモアと哲学で語り続けた。樹木希林の名言には、「ブレーキをかけない」という一貫した姿勢が流れている。恐れるのではなく、面白がる。抵抗するのではなく、受け入れて味わう。
75年の人生の晩年、全身にがんが広がりながらも、樹木希林は映画に出演し続けた。苦しみを隠すのではなく、むしろそれを「ありがたい」と言ってのける。そのことばの裏には、長い時間をかけて磨かれた死生観があった。
ここでは、老いや病気、生と死という人間の根源的なテーマに向き合った樹木希林のことばを7つ紹介する。完璧にコントロールできないものを、どう抱えて生きるか。その問いへのひとつの答えが、ここにある。
樹木希林とはどんな人物か
1943年生まれ、2018年没。本名・内田啓子。東京都出身の俳優。テレビドラマから映画まで半世紀以上にわたり活躍した。晩年は全身にがんを抱えながら出演を続け、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「万引き家族」にも出演。老いや死を飾らず語るそのことばは、没後も多くの人の心に刻まれている。
樹木希林の名言7選|老いと死生観
名言1【樹木希林】年をとることを「面白がる」という選択
年をとることに、絶対にブレーキをかけない。
だから、病気もそう、容姿もそう。
ブレーキをかけない。
ブレーキをかけたって何十年もかけられない。
たががはずれたらどどっと来るんですから。
ブレーキをかけている苦労の方が大変じゃない?(樹木希林)
「若く見せたい」「病気を隠したい」という感情は、誰しも抱くものだ。しかし樹木希林は、そのブレーキこそが苦労の源だと見抜いていた。彼女は老いた顔をそのままに、しわも体の変化もありのままに受け入れながら演じ続けた。整形もしない、若作りもしない。それは諦めではなく、変化に抵抗しないという能動的な選択だった。抵抗し続けると、たがが外れたときの落差はむしろ大きくなる。身体の変化も、人生の流れも、ブレーキをかければかけるほど、手放したときの反動が激しい。自分の中にある「こうあるべき姿」に、どれほどのエネルギーを注いでいるだろうか。そのエネルギーを今この瞬間に向けることができたなら、何かが変わるかもしれない。たとえば今日1つだけ、「若く見せなくていい」と決めてみる。その小さな決断が、ブレーキを外す最初の一歩になる。
名言2【樹木希林】「身体は自分のもの」という思い込みを外す
私、自分の身体は自分のものだと考えていました。
とんでもない。
この身体は借りものなんですよね。
最近、そう思うようになりました。
借りものの身体の中に、こういう性格のものが入っているんだ、と。(樹木希林)
「身体は自分のもの」と当然のように思って生きてきた。ところが樹木希林は晩年、この確信をひっくり返した。全身にがんが広がり、思うように動かせなくなっていく身体と向き合い続けた末に、ようやく届いた感覚だったのかもしれない。それが「借りもの」という気づきだった。自分の意思で動かせると思っていた身体が、実は預かりものだったとしたら、向き合い方が変わる。自分のものだと思えば、うまくいかないとき怒りや焦りが生まれる。しかし借りものなら、その状態をそのまま受け取ることができる。この視点の転換は、病気に限らない。思うようにいかない仕事、コントロールできない感情、変えられない過去。そのすべてを「借りもの」として眺めたとき、少し楽になれる場所が見えてくるかもしれない。
名言3【樹木希林】返すと決めたら、軽くなれる
借りていたものをお返しするんだと考えると、すごく楽ですよね。
(樹木希林)
前の言葉と対になるこの一言は、シンプルだがじわじわと効いてくる。借りたものはいつか返す。それは当たり前のことなのに、身体のこと、命のこととなると、なぜか「失う」「奪われる」という感覚になってしまう。樹木希林は、死を「喪失」ではなく「返却」として捉え直した。全身がんで残り少ない時間を生きながら、彼女は穏やかに、ときにユーモアさえ交えて語り続けた。その軽やかさは、この「返却」という感覚に根ざしていたのではないかと思う。ものごとを手放すことへの恐怖は、執着から来る。「返すんだ」と思えたとき、その執着の重さが少し緩む。完璧に手放せなくてもいい。ただその感覚を知っているだけで、少し息ができる場所が広がる。
名言4【樹木希林】老いを共に経験できる相手の価値
熟年離婚なんて言葉も浸透してきちゃったけど、老いてから別れるのはもったいないわよ。
(樹木希林)
樹木希林と夫・内田裕也の関係は、長年にわたって世間の注目を集めた。実質的な別居状態が続きながらも、亡くなるまで離婚しなかった。半世紀近くにわたってぶつかり合い、距離を置きながらも縁を切らなかった。「なぜ別れないのか」と問われるたびに、彼女は飄々と答えた。この言葉はその文脈の中から生まれたものだ。老いていくという共通の体験を持つ相手を手放すことへの、かすかなもったいなさ。長い時間を積み重ねた関係には、摩擦があるからこそ生まれる深みがある。完璧な関係でなくても、続いてきたことそのものに意味がある。あなたの周りにも、「面倒くさい」と感じながらも、手放したら後悔しそうな縁があるのではないだろうか。老いを共に経験できる相手の存在は、かけがえのないものかもしれない。
名言5【樹木希林】「いつかは」ではなく「いつでも」という感覚
「人間いつかは死ぬ」とよく言われます。
これだけ長くがんと付き合っているとね、「いつかは死ぬ」じゃなくて「いつでも死ぬ」という感覚なんです。(樹木希林)
「人間いつかは死ぬ」という言葉は、実感を伴わないまま使われることが多い。しかし全身にがんを抱えて生きた樹木希林にとって、それは日常の感覚だった。「いつかは死ぬ」ではなく「いつでも死ぬ」。この一言の差は、思っている以上に大きい。「いつかは」という言葉はぼんやりした未来の話で、今日の自分に関係のないように感じさせる。しかし「いつでも」なら、今この瞬間の話になる。樹木希林はその感覚を恐怖ではなく、むしろ今をより鮮明にするものとして受け取っていた。死を身近に置くことで、今日という日の輪郭がくっきりする。自分が当たり前のように過ごしている今この時間を、もう少し丁寧に手に取ることができるかもしれない。今夜、その日あったことを1行だけ書き留めてみる。そのひとつのメモが、命の輪郭を少しだけ鮮やかにしてくれる。
名言6【樹木希林】がんが教えてくれた「真剣に向き合う」という時間
がんはありがたい病気よ。
周囲の相手が自分と真剣に向き合ってくれますから。
ひょっとしたら、この人は来年はいないかもしれないと思ったら、その人との時間は大事でしょう。
そういう意味で、がんは面白いんですよね。(樹木希林)
この言葉を最初に聞いたとき、戸惑いを覚える人も多いだろう。しかし樹木希林が伝えたかったのは、病気そのものを喜ぶことではない。死が近いかもしれないという現実を前にして、人は初めて相手と真剣に向き合う。「来年にはいないかもしれない」という感覚が、その人との時間を取り戻させる。忙しさを理由に後回しにしていた言葉、会いに行けていなかった人、言えずにいた「ありがとう」。樹木希林はそれを「がんが教えてくれた」と語った。病気でなくても、有限であることを意識するだけで、関係の質は変わる。今あなたの隣にいる人と、最後に「真剣に向き合った」のはいつだろうか。帰り道にLINEを1本送るだけでいい。その小さな一歩が、大切な縁を取り戻す入口になる。
名言7【樹木希林】生きることと死ぬことを、日常に取り戻す
生きるのも日常、死んでいくのも日常。
死は特別なものとして捉えられているが、死というのは悪いことではない。(樹木希林)
生と死を対立させず、どちらも日常の連続として捉える。この視点は、現代の私たちが失いかけているものかもしれない。死は病院の中に隠され、特別な出来事として扱われるようになった。しかし樹木希林が身をもって示したのは、老いも病気も死も、すべてが命の流れの中にあるということだった。そう思うと、死への恐怖は少し形を変える。「悪いことではない」という言葉は、諦めでも楽観でもなく、長い時間をかけてたどり着いた落ち着きのように聞こえる。樹木希林の死生観は、今を生きることそのものへの深い信頼から生まれていた。自分の命の終わりを特別なものとして遠ざけるのではなく、今生きていることの延長線として静かに眺める。その視点が、今日という日をどう生きるかを、少しだけ変えてくれるかもしれない。
まとめ
老い、病気、死。樹木希林のことばは、誰もが目を背けたくなるテーマを、正面から、しかし重くなりすぎずに語る。彼女の生き方の核心は「ブレーキをかけない」ことだった。変えられないものを変えようとする力を手放したとき、かえって自由になれる場所がある。借りものの身体を、今日もここまで運んでくれていること。その事実の中に、すでに十分なものがある。
完璧にコントロールしようとしなくていい。ありのままを面白がるというのは簡単ではない。それでも、少しだけその方向に顔を向けてみる。樹木希林が残したことばは、弱った心に喝を入れるのではなく、そっと隣に寄り添ってくれる。そのやさしさの中に、長い時間をかけて積み上げられた誠実さがある。
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6月18日(水)
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— ジョージ・エリオット











