樹木希林が内田裕也との縁に見た名言7選|夫婦は互いのダイバダッタ

樹木希林が内田裕也との45年の別居婚から導いた縁の名言7選。「夫婦は互いのダイバダッタ」。ぶつかる相手こそ自分を映す鏡だという逆説の哲学を、出典つきで解説します。
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パートナーと価値観が合わない。何度話しても分かり合えない相手がいる。そんな関係の行き詰まりの中にいるとき、樹木希林の名言はふしぎな角度から光を当ててくれる。「合わない相手」を切り捨てるのでも、我慢して耐えるのでもない、第三の道があると教えてくれるからだ。
樹木希林は1973年、ロック歌手の内田裕也と結婚した。ところが約1年半で別居。それでも離婚はせず、2018年に亡くなるまで45年間、夫婦であり続けた。世間の物差しでは測れないこの関係から、希林は「縁」についての独自の哲学を導き出していく。
この記事では、樹木希林が内田裕也との縁について語った名言を7つ紹介する。夫婦の話でありながら、友人関係にも、職場の人間関係にも、そのまま効いてくる言葉たちだ。

樹木希林とはどんな人物か

樹木希林(1943〜2018)は東京生まれの俳優。本名は内田啓子。ドラマ「寺内貫太郎一家」や映画「万引き家族」など数々の作品に出演し、2013年に全身がんであることを公表してからも現役を貫いた。1973年に内田裕也と結婚するも、約1年半で別居。以後、離婚しないまま45年間夫婦であり続けた。2018年9月、75歳で他界。老いも病も面白がるその生き方と独特の結婚観は、今も多くの人の心に残っている。

樹木希林が内田裕也との縁に見た名言7選

名言1【樹木希林】頭を下げたら、夫は優しい人だった

自分の悪い点を見据えて、頭を下げるようにしたら、何のことはない、夫は実に優しい人でした

樹木希林

出典:「いきいき」(現ハルメク)2007年1月号
2007年、雑誌「いきいき」(現在のハルメク)のインタビューで語られた言葉。結婚から30年以上、別居のまま夫婦であり続けた樹木希林が、関係の転機をこう振り返った。相手の欠点を数えるのをやめ、自分の悪い点を見据えて頭を下げるようにしたら、あの内田裕也が「実に優しい人」だったと気づいたという。相手が変わったのではない。自分の構えが変わると、同じ相手のまったく別の面が見えてくる。これは夫婦に限った話ではない。職場でそりが合わない人、気まずくなったままの友人。関係がこじれているとき、私たちはたいてい相手の非を数えることに忙しい。その手をいったん止めて、自分の側の悪い点をひとつだけ認めてみる。頭を下げることは敗北ではなく、関係の見え方を変える最初の一手になる。

名言2【樹木希林】相手のマイナスは自分の中にもある

どの夫婦も、夫婦となる縁があったということは、相手のマイナス部分が必ず自分の中にもあるんですよ

樹木希林

出典:『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文春新書)
樹木希林の死後まもなく、2018年12月に刊行された『一切なりゆき 樹木希林のことば』に収められた言葉。ベストセラーとなったこの本の中でも、希林の夫婦観を象徴する一言として知られている。夫婦になる縁があったということは、相手のマイナス部分が必ず自分の中にもある。つまり、相手の嫌なところは自分を映す鏡だという指摘だ。パートナーの身勝手さにいら立つとき、実は自分の中の身勝手さが反応しているのかもしれない。友人の自慢話が鼻につくとき、自分の中の焦りがざわついているのかもしれない。そう考えると、相手への腹立ちは、自分を知るための手がかりに変わる。誰かにどうしようもなく腹が立った日こそ、その怒りが自分の何を照らしているのかを、そっとのぞき込んでみたい。

名言3【樹木希林】夫婦は互いのダイバダッタ

どんな夫婦だって、互いが互いのダイバダッタなんじゃない?

樹木希林

出典:『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文春新書)
ダイバダッタ(提婆達多)とは、釈迦のいとこでありながら、生涯にわたって釈迦に敵対し続けたと伝えられる人物のこと。仏教には、この最大の敵こそが釈迦の修行を深めた存在だったという逆説的な解釈がある。樹木希林は『一切なりゆき』の中で、夫婦をこのダイバダッタになぞらえた。1973年に内田裕也と結婚し、わずか1年半で別居。それでも45年間、離婚せずに夫婦であり続けた希林が言うからこそ、この言葉には実感の重みがある。自分を最も悩ませる相手が、実は自分を最も磨いてくれる相手でもある。ぶつかってばかりの上司、どうにも分かり合えない家族。その存在を「敵」と切り捨てる前に、この人は自分の何を映し、何を鍛えてくれているのだろうと問い直してみる。敵対と縁は、案外となり合わせにある。

名言4【樹木希林】縁は自分と同じレベルの人と結ばれる

縁というのは、自分と同じレベルの人としか結ばれないと相場が決まっているんですよ

樹木希林

出典:「婦人公論」インタビュー(『人生、上出来 増補版 心底惚れた』収録)
「婦人公論」のインタビューで語られた言葉。縁は自分と同じレベルの人としか結ばれない、と希林は言い切る。一見、耳の痛い言葉だ。相手に不満があるなら、その相手と結ばれた自分も同じ水準だということになるのだから。だが、この言葉は裏返すと希望になる。相手を責めても縁は変わらないが、自分が変われば、結ばれる縁のほうが変わっていくということでもあるからだ。希林自身、内田裕也との関係を嘆くのではなく、その縁を引き受けた自分を磨く方向に力を注いだ。今の人間関係に不満があるなら、それは相手だけの問題ではなく、今の自分の映し絵かもしれない。そう考えた瞬間、愚痴をこぼす時間が、自分を育てる時間に置き換わっていく。耳の痛い言葉ほど、動き出すきっかけをくれる。

名言5【樹木希林】来世で出会わないために、今完璧に付き合う

愛というより、私には内田さんが必要だったということですね。来世で出会わないために、今完璧に付き合っているのよ

樹木希林

出典:「文藝春秋」2014年5月号
「文藝春秋」2014年5月号のインタビューでの言葉。内田裕也への思いを「愛というより必要だった」と言い切ったあと、希林はこう続けた。来世で出会わないために、今完璧に付き合っているのよ、と。ふつう夫婦の理想といえば「来世でもまた一緒に」だろう。それを真顔でひっくり返してみせるところに、希林の真骨頂がある。冗談めかしていながら、中身は深い。この関係から逃げれば、宿題は来世まで持ち越しになる。ならば今世のうちに、この人との関係をやり切ってしまおうという発想だ。苦手な相手との関係も、避け続けるのではなく「今のうちに済ませておく」と捉え直すと、不思議と足が前に出る。笑いながら覚悟を決める。深刻ぶらずに本質を突く、希林らしい飄々とした一言だ。

名言6【樹木希林】相手を変えようとするのは浅知恵

相手のことを変えようというのは浅知恵ね。それより「自分はどうなの?」って考えなくちゃ

樹木希林

出典:「婦人公論」インタビュー(『人生、上出来 増補版 心底惚れた』収録)
同じく「婦人公論」のインタビューで語られた言葉。相手を変えようとするのは浅知恵、それより自分はどうなのかを考えなくちゃ、と希林は言う。心理学の世界でも、他人と過去は変えられず、変えられるのは自分と未来だけだとよく言われる。頭では分かっていても、私たちはつい相手の修正から始めてしまう。パートナーの生活習慣を直そうとして口論になる。後輩の仕事ぶりに注文をつけて、関係がぎくしゃくする。変えようとすればするほど、相手は頑なになっていく。希林はその努力を「浅知恵」とばっさり切り捨てた上で、視線を自分に戻せと言う。相手に言いたいことが喉まで出かかったとき、その言葉をいったん飲み込んで、自分はどうなのかと問うてみる。関係を動かす力は、いつも自分の側にある。

名言7【樹木希林】違いを認めた上で、生きていく

皆が違っていて譲れない部分がある。それを認めた上で、生きて行く私たちっていうのがいいじゃない

樹木希林

出典:「文藝春秋」2014年5月号
「文藝春秋」2014年5月号のインタビューを締めくくるように語られた言葉。希林と内田裕也の45年は、違いを埋めていく歴史ではなく、違いを認めていく歴史だった。分かり合えたから続いたのではない。譲れない部分があると認め合ったから続いたのだ。私たちはつい、良い関係とは価値観が一致している状態だと思い込む。だから意見が食い違うたびに、この関係は駄目なのかもしれないと不安になる。でも希林の見方は逆だ。違っていて、譲れなくて、それでも一緒に生きていく。その不揃いのまま続いていく姿こそ「いいじゃない」と肯定する。友人と意見が合わなかった日も、家族と衝突した日も、関係が壊れたわけではない。違いが見えたということは、相手を一枚深く知ったということでもある。

まとめ

樹木希林が内田裕也との縁に見ていたのは、「合う相手と結ばれる幸せ」ではなく、「合わない相手から自分を知る学び」だった。相手のマイナスは自分の中にもある。縁は自分と同じレベルの人と結ばれる。夫婦は互いのダイバダッタ。どの言葉も、矛先が相手ではなく自分に向いている。だからこそ、聞く側の足元を静かに照らしてくれる。
分かり合えない相手を前にしたとき、関係を切るか耐えるかの二択で考えなくていい。この人は自分の何を映しているのだろう、と一度だけ問うてみる。それだけで、行き詰まっていた関係が「自分を磨く縁」に姿を変えることがある。違っていて、譲れなくて、それでも続いていく。そんな不完全な縁を面白がる目を、希林の言葉から少しだけ借りてみてほしい。
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6月18日(水)
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