髙井伸夫の名言33選

労働弁護士として50年、ニチバン再建など企業の現場に立ち続けた髙井伸夫の名言33選。朝活・半歩先の発想・考えぬく力など、働き方に迷うときに効く言葉を出典つきで解説します。
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髙井伸夫の名言には、50年にわたって企業の労働問題の最前線に立ち続けた弁護士ならではの重みがあります。団体交渉の修羅場、経営再建の現場、そして「働くとは何か」を問い続けた連載や著書。そこから生まれた言葉は、理屈よりも先に、働く人の現実を知っている人の声として届きます。
「リーダーとは愛すること」「半歩先を歩む」「AIは考えぬくことができない」。どれも、仕事で迷ったときに自分の軸を思い出させてくれる言葉です。評価に納得がいかないとき、夢を小さく畳みそうなとき、残業の長さで自分を測ってしまうとき。それぞれの場面に効く言葉を、出典とともに33件そろえました。
見出しを眺めて、いまの自分に近い場面から読んでみてください。一つでも「これは覚えておきたい」と思える言葉が見つかれば、それがこの記事の役目です。

髙井伸夫とはどんな人物か

髙井伸夫(たかい・のぶお)は1943年生まれの弁護士で、第二東京弁護士会に所属。経営側の労働弁護士として、ニチバンの経営再建をはじめ数多くの企業の労働問題や団体交渉に関わってきました。労働新聞の連載『愚考閑話録』『人事労務散歩道』などで働き方や人事を論じ、生産性向上や時間活用をテーマにした著書も多数。『朝一番の「習慣」が人生を変える』で提唱した「朝活」や、クライアントの課題を先読みする「半歩先の発想」は、ビジネスパーソンに広く知られています。

髙井伸夫の名言33選

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名言1【髙井伸夫】会社の規模を同期と比べてしまうとき

企業は存続することこそが第一の社会的責任なんですよ。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
2016年、弁護士ドットコムタイムズのロングインタビューで語った言葉。雇用を生み、納税し、社会の中で活動し続けること自体が企業の第一の責任だという信念がこもっている。大きな会社に勤める同期の話を聞いて、自分の職場を小さく感じることがある。でも髙井の軸は規模ではなく「続いているか」だ。その組織が動き続け、自分もその一員として働いた事実は、数字に劣らない誇りの根拠になる。

名言2【髙井伸夫】踏ん張りが報われない気がするとき

苦しい峠も登りつめれば新しい平野が見渡せるのだと実感しましたね。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
映画会社の難しい団体交渉をやり遂げた後の実感として語った言葉。苦しさのピークを越えた先に、新しい景色が必ず開けると髙井は知っていた。報われない感じが続くと、踏ん張ること自体が虚しくなってくる。けれど峠の「途中」にいるということは、少なくとも登っている最中だということだ。視界が開けないのは、まだ頂に着いていないだけ。いまの一歩は、確かに上に向かっている。

名言3【髙井伸夫】人をまとめる立場に萎縮するとき

結局、リーダーというのは愛することなんですよ。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
ニチバンの経営再建をやり遂げた後に語った言葉。リーダーとは、相手の心を受け止められる人だという考えが凝縮されている。チームをまとめる立場に立つと、実力が足りない気がして萎縮しがちだ。でも髙井は技法や権限ではなく「愛すること」と言い切る。相手を気にかけ、その人の事情を知ろうとすること自体がリーダーシップの本体だ。不完全でも誰かを思っている人は、すでにその入口に立っている。

名言4【髙井伸夫】要領よく立ち回れない自分を責めるとき

「天下の大道を歩む。小細工は弄しない」これが私の弁護士としての信条です。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
弁護士としての信条を問われて答えた言葉。正道を歩み、堂々と訴訟や交渉に臨む姿勢を半世紀貫いてきた。うまく立ち回れない自分を、要領が悪いと感じてしまうことがある。でも「天下の大道を歩む」とは遠回りの選択ではなく、信条だ。小細工をしない正直な行動は、時間がかかっても積み重なって信頼になる。正攻法を貫いてきた自分の選択を、損だと思わなくていい。

名言5【髙井伸夫】仕事に意味が見えなくなったとき

事件は、大義名分があるかどうかで小さい事件にもなるし、大きい事件にもなります。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
数多くの労働事件を扱ってきた経験則として語った言葉。大義名分を明確にすることで、同じ事件の重みが変わるという。仕事に意味が見えなくなると、こなすだけの毎日が続く。そんなとき問うべきは「なぜこれをやるのか」だ。目の前の作業も「誰かの何かを変える」という言葉に結びつければ、同じ作業が違う重さを持ち始める。大義名分は、始める前に用意できなくてもいい。あとから言語化しても、仕事の軸は変わらない。

名言6【髙井伸夫】職場の摩擦が終わらない気がするとき

労働事件は、永久闘争ではありません。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
対立を繰り返すのではなく共存共栄を目指すべきだという、髙井の基本姿勢を端的に表した言葉。職場の対立や摩擦が続くと、それが「普通」になってくる。消耗しながら、このまま続くのかと思えてくる。でも髙井は言い切る、闘争は永久には続かないと。どんな対立にも終わりがある。その終わりを視野に入れるだけで、いまの消耗を少し距離を置いて眺められるようになる。

名言7【髙井伸夫】自分の勤め先を「普通の会社」と思うとき

社会にとって必要のない会社は倒産した方がいいのですが、5年、10年、20年、30年と続いている会社というのは、われわれが考えている以上にみんな立派なんですよ。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
経営側の弁護士として数多くの企業再建に携わった経験から、存続し続けることの価値を語った言葉。自分の勤め先を「普通の会社」と言い下げてしまうことがある。でも髙井は、続いている会社は「われわれが考えている以上に立派」だと言う。外から見えにくいだけで、存続の裏には無数の判断と踏ん張りが積み重なっている。その場で働く自分も、その連続の中に確かにいる。

名言8【髙井伸夫】AIに仕事を奪われる気がするとき

情報処理能力ではAIに凌駕されていくけれども、AIは考え「ぬく」ことはできません。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
AIの未来を問われたインタビューで語った言葉。情報処理では負けても、徹底して考え抜く力は人間にしかないという信念が「ぬく」の一語に込められている。AIに仕事を奪われていく感覚があって、自分に何が残るのかわからなくなることがある。でも速さや処理量ではなく、問いを手放さず考え続ける粘りが人間の強みだ。わからなくても考えを止めない。その粘りが、そのまま武器になる。

名言9【髙井伸夫】デジタルに弱い自分を責めるとき

現代で仕事をするにあたっては『ハイテク』とともに、技術社会で必要とされる人間同士の心のふれあいという意味で『ハイタッチ』が必要なんです。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
技術化が進む時代の仕事観を語った言葉。技術的スキルだけでなく、人と人との心のふれあいが欠かせないと訴えた。技術やスキルが足りない気がして、デジタルに詳しくない自分を責めることがある。でも髙井は「ハイタッチ」という言葉を添える。人間同士が心でふれあうこと。それはスキルより先に、誰かが誰かに求めているものだ。テクノロジーに不安がある人ほど、その強みをすでに持っていることがある。

名言10【髙井伸夫】完璧に準備してから動こうとするとき

弁護士の仕事も、企業経営も、なんでもスピードが重要です。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
弁護士業も企業経営も、あらゆる仕事でスピードが成否を分けると語った言葉。完璧に準備してから動こうとして、気づくと出遅れていることがある。完成度への執着が、行動をにぶらせる。でも髙井は言い切る、なんでもスピードが重要だと。動いてから直す方が、積み重なると質は上がっていく。完璧でなくても動き出したその一手が、仕事のスピードそのものだ。

名言11【髙井伸夫】先が読めずに立ち止まるとき

弁護士の場合は、それ以上に半歩先を歩むことを心がけなければなりません。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
クライアントの課題を先読みし、半歩先を行く先見性を持つことが弁護士の使命だという考えを示した言葉。「次どうすればいい?」と立ち止まることがある。先を読もうとすると、確信が持てるまで動けなくなる。でも「半歩先を歩む」は、全貌を読み切ることではない。いまいる場所から、ほんの少しだけ遠くに目を向ける習慣だ。大きな予測より小さな先読みを一つ持ち歩くほうが、次の一歩は出しやすくなる。

名言12【髙井伸夫】折り合いをつけることを弱さと感じるとき

僕は絶対に偽証しませんし、訴訟で全力を尽くしたあとで和解の機が熟せば、依頼者を強力に説得したりもします。

(髙井伸夫)

出典:弁護士ドットコムタイムズ Vol.10 ロングインタビュー
弁護士としての誠実さと使命感を語った言葉。偽証しない誠実さと、和解の機を見極める勇気の両立が髙井の信条だった。全力でやったのに「もっとやれたはず」と責め続けるのが誠実さに見えることがある。折り合いをつけることを弱さと混同してしまう。でも、全力を尽くしたあとで和解を選ぶのは妥協ではない。やり切った人だけが感じ取れる「機」がある。手を引く判断も、全力の続きだ。

名言13【髙井伸夫】頑張っても何も残らない気がするとき

経営側弁護士として寝食を忘れ心血を注いだ体験こそが、どんなに苦しくとも、人に仕事に全人格でぶつかる姿勢を私の身体に沁みこませてくれました。

(髙井伸夫)

出典:髙井・岡芹法律事務所 公式サイト 創業者ご挨拶
髙井・岡芹法律事務所の公式サイトに、創業者として記した言葉。全力でぶつかる仕事姿勢がどこで作られたかを振り返っている。「こんなに頑張っているのに、何も残っていない気がする」。そう感じる時期は、苦しいだけで終わりそうな毎日を早く過ぎ去らせたくなる。でも「身体に沁みこむ」という言葉が示すのは、体験が消えずに姿勢になるということだ。しんどいいまは、後から気づく自分の骨格を形づくっている。

名言14【髙井伸夫】仕事を「こなす」モードになっているとき

哲学の根本は”人間愛”だということも学びました。

(髙井伸夫)

出典:髙井・岡芹法律事務所 公式サイト 創業者ご挨拶
労働問題の解決には哲学が必要であり、その根本に「人間愛」があるという信念を、事務所の創業者挨拶で記した言葉。仕事を「こなす」モードになると、目の前の人の事情が見えにくくなる。効率や正確さを追うほど、誰のための仕事かが遠のいていく。「哲学の根本は人間愛」と聞くと難しそうだが、要は「この人のことを考えているか」という問いに戻ることだ。その問いを持つだけで、仕事の質感は変わる。

名言15【髙井伸夫】過去の努力を値引きしてしまうとき

弁護士になって50年余、依頼者に満足してもらえる結果を出すため、私は寝食を忘れてがむしゃらに勉強してきた。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第7回 団体交渉(2015年7月27日)
労働新聞の連載「愚考閑話録」で、団体交渉を語る回の冒頭に書いた言葉。弁護士50年余を、依頼者のために寝食を忘れて勉強し続けた日々として振り返っている。「もっと効率よくやれたはず」と過去の努力を値引きする癖がある。でも、がむしゃらにやった時間は、整然と積み上げたものとは違う強さを持つ。「依頼者に満足してもらえる結果」の一点に向き合い続けた日々が、50年の土台になった。目的が明確なら、不格好でいい。

名言16【髙井伸夫】専門家の判断に素直に従えないとき

どの分野でも、専門的に研鑽を重ね思索を深めた人の見解に敬意を表するべきであり、素人が我見を通すのは極めて危険なことである。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第8回 専門的職業人(2015年8月24日)
連載「愚考閑話録」で専門的職業人を論じた回の冒頭に書いた言葉。専門家への敬意と、素人判断の危険性を説いている。「自分はそれほど詳しくないし」と引っ込める場面と、逆に「でも私はこう思う」と突っ張る場面がある。どちらも評価の軸がずれたときに起きる。「研鑽を重ね思索を深めた人の見解に敬意を表する」とは、謙虚さの話ではなく正確さへの姿勢だ。任せると言える判断も、知識の一つの形だ。

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名言17【髙井伸夫】夢を現実的に小さく畳んでしまうとき

青春時代の特権は、大きな夢を抱いて遮二無二がんばり抜く熱意ではないか。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第5回 青春時代(2015年5月25日)
連載「愚考閑話録」の青春時代を語る回の冒頭に書いた言葉。若者が夢に向かって全力で突き進む熱意こそが、青春の本当の特権だと記した。「現実的でないと恥ずかしい」と思い始めて、夢を小さく畳んでいくうちに、何に向かっているかわからなくなる。でも「青春の特権」は年齢だけの話ではない。不格好でも見栄えが悪くても、遮二無二がんばれる時間を持てること自体が特権だ。熱意に、体裁の条件はいらない。

名言18【髙井伸夫】「自分は何者なんだろう」と問うとき

齢を重ねたわが身の青春時代を顧みると、自分自身が何者たり得るのだろうかという不安もあったに違いないが、それをはるかに上回る夢と希望にあふれ、友情を育み、青雲の志を抱き、未来は光輝いていた。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第5回 青春時代(2015年5月25日)
同じ青春時代の回で、自らの若い日を顧みて書いた言葉。何者になれるのかという不安はあったはずだが、それをはるかに上回る夢と希望に満ちていたと振り返る。「自分は何者なんだろう」という問いが頭を占めることがある。その問いを抱くこと自体は弱さではない。不安は消す対象ではなく、夢や希望と共存できるものだ。どちらかを選ぶ必要はない。夢を大きく持つほど、不安は相対的に小さくなっていく。

名言19【髙井伸夫】残業時間だけで自分を測ってしまうとき

長時間労働を是正するとしても画一的に時間の長さにのみ着目することに合理性はあるのか。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第21回 働き方改革(2)(2016年9月26日)
連載「愚考閑話録」で働き方改革を論じた回の冒頭に書いた言葉。労働時間の長さだけを問題にする画一的な見方に疑問を投げかけた。「残業が少ないほうが評価される」と感じて、時間内に収めることが目的にすり替わることがある。何を達成したかより、何時間かけたかで自分を測ってしまう。けれど時間の長さは成果のものさしにならない。この問いは、仕事の軸を「時間」から「中身」へ戻す起点になる。

名言20【髙井伸夫】「この仕事、向いていないかも」と思うとき

どのような仕事であれ、その真髄を知るには寝食を忘れて没頭すべき時期が必ずある。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第21回 働き方改革(2)(2016年9月26日)
同じ働き方改革の回で書いた言葉。仕事の真髄を知るには、全力を注ぐ時期が必ず要ると訴えた。「この仕事、向いていないかも」と思うとき、まだ本当に没頭したことがないだけかもしれない。上達する前に離れるのと、全力を注いだ上で判断するのとでは話が違う。この言葉は、評価を急ぎすぎることへの警告でもある。一度だけ、境界線のないところまで入ってみる。その体験が、向き不向きの答えを連れてくる。

名言21【髙井伸夫】掘り下げても突破口が見えないとき

世界も日本も経済は縮小均衡状態であり、どの分野においても垂直思考から水平思考へと切り替わっているのだ。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第23回 資本主義からの脱皮(2016年11月28日)
連載「愚考閑話録」で資本主義からの脱皮を論じた回の冒頭に書いた言葉。経済が縮小均衡に向かう中で、思考様式の転換を迫った。どれだけ深く掘り下げても突破口が見えない、と感じることがある。それは努力が足りないのではなく、方向を問い直すタイミングかもしれない。一点に集中し続ける「垂直」の力は大切だ。だが行き詰まったときは、横につないで広げる「水平」の発想が風穴を開けることがある。

名言22【髙井伸夫】「自分だけうまくいかない」と感じるとき

私たちは従来の思考方法が通用しない歴史の転換点にいると思わざるを得ない。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第23回 資本主義からの脱皮(2016年11月28日)
同じ回で、従来の思考方法が通用しない転換点に私たちはいる、と時代認識を示した言葉。「なんで自分だけうまくいかないんだろう」と思い始めたとき、原因を自分の内側だけに探し続けても答えは出にくい。時代そのものが転換点にあり、古い発想のままでは誰もがつまずくからだ。問題を個人の力量に帰すより先に、発想の枠ごと更新してみることが先に来る局面がある。

名言23【髙井伸夫】悩みが頭の中でぐるぐる回るとき

私たちは、言葉なしには決して考えることはできない。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第12回 知性・考えぬく(2015年12月28日)
連載「愚考閑話録」で知性と「考えぬく」ことを論じた回の冒頭に書いた言葉。言語と思考の切り離せない関係を論じた一節だ。頭の中でぐるぐる悩んでいるのに、うまく整理できない。そんなとき、足りないのは答えではなく言葉であることが多い。思考の出口は言葉の中にある。もやもやした感覚に「名前」をつける。それだけで、止まっていた思考は動き始める。

名言24【髙井伸夫】議論の場で言葉が出てこないとき

私たちは言葉によって考え、思索を深め論理を構築し、議論を重ねることができるのである。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第12回 知性・考えぬく(2015年12月28日)
同じ回で、言葉があるからこそ思索を深め、論理を組み立て、議論を重ねられると述べた一節。議論になると言葉が出てこない、と悩む人は多い。でもそれは才能の差ではない。言葉によって考え、論理を築くのなら、言葉を使うことそのものが思考を育てる。うまく話せないうちは、まだ言葉の場数が足りていないだけだ。拙くても口に出した回数が、そのまま考える力になっていく。

名言25【髙井伸夫】同じ仕事なのに評価が低いと感じるとき

世の中の不公平の最たるものは、同等の仕事をして同じような成果を上げながら一方が他方より低い評価を受け、低い賃金しか得られないことではないだろうか。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第6回 同一労働同一賃金(2015年6月22日)
連載「愚考閑話録」で同一労働同一賃金を論じた回の冒頭に書いた言葉。格差への鋭い問いかけだ。同じ仕事をして同じ成果を上げているのに、一方だけ評価が低いのはおかしい。そう感じることをためらわなくていい。評価の不公平に気づける感覚は、結果に無関心な人には生まれない。自分の仕事をまじめに考えているからこそ、怒りが出てくる。その怒りは、仕事への真剣さの裏返しだ。

名言26【髙井伸夫】認めてほしい気持ちを抑え込むとき

社会的存在である人間は、深層心理で他者から評価されることを願う習性を持っている。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第6回 同一労働同一賃金(2015年6月22日)
同じ回で、人間は他者からの評価を求める本能的な欲求を持つという洞察から、公平な評価制度の大切さを論じた言葉。評価されたい、認めてほしい。その気持ちを「みっともない」と抑え込もうとする人は少なくない。でも、他者から評価されることを求めるのは「深層心理」に根ざした習性だと髙井は言う。認めてほしいと感じるのは弱さではなく、真剣に仕事と向き合っている証だ。

名言27【髙井伸夫】「自分が選ばれることはない」と思うとき

エリートの抜擢・育成が極めて重要であることを忘れてはならない。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第16回 エリートの登竜門とAI(2016年4月25日)
連載「愚考閑話録」でエリートの登竜門とAIを論じた回に書いた言葉。優れた人材の抜擢と育成が、組織と社会に欠かせないと主張した。「自分が選ばれることはないだろう」と、ひそかに思ってしまうことがある。でも、抜擢と育成が「極めて重要」と言われるほど、組織は意図的に可能性を探している。誰かに選ばれる前に、自分がその対象に入っている可能性を閉じなくてもいい。

名言28【髙井伸夫】比べられるたびに消耗するとき

競争こそが個人を磨き、組織の質を高めていくといっても過言ではない。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第16回 エリートの登竜門とAI(2016年4月25日)
同じ回で、競争を通じて個人と組織が成長するという信念を示した言葉。比べられるたびに消耗するばかりで、何も残らない気がする。そう感じているなら、競争を「削るもの」と捉えているのかもしれない。でも「競争こそが個人を磨く」のなら、その場にいる誰かは自分を追い込むためではなく、変わるきっかけとして存在している。競争は傷ではなく、砥石だ。削られた分だけ、形は鋭くなる。

名言29【髙井伸夫】就職や転職で自信を削られるとき

事業戦略・企業戦略は採用戦略に宿る

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の人事労務散歩道」第25回 これからの採用(2012年1月30日)
労働新聞の連載「人事労務散歩道」で採用を論じた回の冒頭に書いた言葉。髙井自身が「私のこの造語」と呼ぶ警句で、優れた採用こそ事業の根幹だという信念を示している。就職や転職を「どこに拾ってもらえるか」の問題と思い始めると、自信が削られていく。でも組織は人材を選ぶことで、自らの未来を決めている。選ぶ側がそこまで真剣なら、選ばれる側にも確かな価値がある。

名言30【髙井伸夫】憧れの強さに引け目を感じるとき

自らには備わっていないもの=美を求めて、人は美しいものに憧れを抱くのである。

(髙井伸夫)

出典:労働新聞 連載「髙井伸夫弁護士の愚考閑話録」第10回 美術の価値(2015年10月26日)
連載「愚考閑話録」で美術の価値を論じた回の冒頭部分。自分に備わっていない美しさを求めて人は美術に憧れる、という人間の本質を語った言葉だ。憧れの強さに罪悪感を覚えることがある。持っていない自分が際立つようで、見ているのがつらくなる。でも「自らには備わっていないもの」を求めて憧れが生まれるのだとすれば、憧れは欠如の証明ではない。自分が何を求めているかを知っている、というサインだ。

名言31【髙井伸夫】「また差をつけられた」と感じるとき

自分を高め、日々さらによい仕事をしていく人は、すでに朝7時から1日をスタートさせている

(髙井伸夫)

出典:髙井伸夫『朝一番の「習慣」が人生を変える 午前中に仕事をすべて片付ける技術』(講談社+α文庫、2008年)
著書『朝一番の「習慣」が人生を変える』より。成果を出し続ける人に共通する習慣として、始業前の早朝から仕事を始めることを紹介した一節。「また差をつけられた」と感じるとき、能力や運のせいにすると一瞬楽になる。でもこの言葉は、差の正体はもっと単純だと静かに指摘する。「すでに」の一語が重い。朝7時から始めている人との差は、才能ではなく時刻の差だ。覚悟がなくても、朝に体を動かせばスタートラインは変わる。

名言32【髙井伸夫】何時間働いても追いつかないとき

朝の一時間の密度は、昼の二時間、三時間分にもなります。ほかの人が出社するころには、半日分近い仕事量をこなしてしまっているのです。

(髙井伸夫)

出典:髙井伸夫『朝一番の「習慣」が人生を変える 午前中に仕事をすべて片付ける技術』(講談社+α文庫、2008年)
同じ著書の冒頭近くで、朝の時間の集中度が他の時間帯と比べて格段に高いことを示した一節。「何時間働いても追いつかない」と感じることがある。この言葉は、時間の量ではなく「密度」が成果を決めると言っている。脳が澄んでいる朝の一時間は、昼過ぎの二時間にも三時間にも勝る。労働時間の長さを頑張りの基準にしなくていい。朝に一時間だけ深く集中できれば、それだけで半日分近い重さを持てる。

名言33【髙井伸夫】深夜まで頑張ったのに進んでいないとき

夜に仕事をするのは、やった気になるだけで、それほど成果は上がらないということがはっきりしているのです。

(髙井伸夫)

出典:髙井伸夫『朝一番の「習慣」が人生を変える 午前中に仕事をすべて片付ける技術』(講談社+α文庫、2008年)
同じ著書で、夜の残業の効率の低さを指摘し、朝型の仕事スタイルへの転換を促した一節。深夜まで仕事を続けて、翌朝見返すと思ったより進んでいない。「あれだけ頑張ったのに」という落差の正体を、この言葉は明かしている。夜の疲れた脳では、作業は動いていても思考は止まっている。「やった気になるだけ」という表現が、夜型の働き方の核心をついている。遅くまで残ることを、頑張りと呼ばなくていい。

まとめ

髙井伸夫の名言33選を、場面ごとにたどってきました。存続する会社への敬意、リーダーとは愛することだという断言、AIにはできない「考えぬく」力、そして朝の一時間の密度。どの言葉にも、半世紀にわたって企業と働く人の間に立ち続けた弁護士の実感が通っています。
全部を覚える必要はありません。評価に納得がいかないとき、夢を畳みそうなとき、残業の長さで自分を測ってしまうとき。そのときの自分に一番近い場面の言葉を、一つだけ持ち帰ってみてください。髙井の言う「半歩先」は、大きな飛躍ではなく、いまいる場所から少しだけ遠くに目を向けることから始まります。

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7:12
6月18日(水)
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