スマホ普及で変わる読書文化と情報消費
SNSと読書—情報と娯楽の境界線を考える
「読書は単なる情報処理ではなく、娯楽のように楽しむべきものだ」
2010年代に入り、スマートフォンの急速な普及とともに、SNSが人々の日常に深く根付くようになりました。
これに伴い、情報の消費方法が大きく変化し、読書も例外ではありません。SNSが普及したことで、読書は「娯楽」から「情報処理」へと変貌しつつあります。
総務省の「通信利用動向調査」によれば、2010年に9.7%だったスマートフォンの世帯保有率は、2020年には86.8%に達しました。このスマートフォンの普及と並行して、SNSの利用者も増加し、2020年にはネットユーザーの80.3%がSNSを利用している状況です。SNSがコミュニケーション手段として確立される一方で、読書量に影響が出ているのは事実です。
上田修一の調査によると、読書量が減ったと感じている人の中で、SNSの影響を指摘する人は6.2%に過ぎない一方、49.0%が「仕事や家庭の忙しさ」を原因としています。このデータから、読書量の減少はSNSだけではなく、現代のライフスタイル全体が影響していることがわかります。
さらに、読書が「娯楽」ではなく「情報処理」として捉えられる傾向が強まっているのも興味深いポイントです。
現代の読書法に関する書籍は、速読や効率的な情報収集を重視する内容が多く見られます。
稲田豊史が映画鑑賞について「鑑賞物」と「消費物」に分けたように、読書もまた「ノイズ込みの知識を得る」ことから「ノイズを除去した情報を得る」行為へとシフトしているのです。
この「ノイズ」を除去した読書は、ビジネスや学習の場で役立つ反面、私たちが本来楽しんでいた読書の醍醐味を失わせる危険性もあります。
情報過多の時代において、私たちは効率を追求するあまり、読書の本質を見失っているのではないでしょうか。
田端信太郎が「ファスト教養」と呼ぶ、効率的に情報を得るための教養が台頭する中で、読書は単なる情報収集の手段となりつつあります。
しかし、他者の文脈や過去の知識に触れることこそが、真の教養であり、それが読書の魅力であるはずです。
自分とは異なる時代や文化に触れることで、私たちは新たな視点を得ることができます。
最後に問いかけたいのは、私たちは本当にノイズを除去した情報だけで生きていけるのかということです。
読書を通じて他者の文脈に触れ、時にはノイズに迷い込むことも、私たちの成長には必要なのではないでしょうか。
引用元：なぜ働いていると本が読めないの？「娯楽」が「情報」になる日…読書はいつから「ノイズ」になったのか
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